【真由】「わー、なつかしー」
【真由】「全然変わってないね、この公園」
さやねぇたちに怒られ買い物を終えてご飯を食べ。
じゃあ帰るか、とその途中。
せっかくだし寄ってみようか、と何となく公園へやってきた。
【紗香】「最近は危ないからって遊具が禁止されちゃうこともあるのにねー」
【悠】「住宅街で小さい子どもも多いからな」
【茜】「と言ってもやっぱりイマドキだねー」
【茜】「あんまり遊んでる子いないし」
【悠】「まぁな」
【真由】「でも良かったー。私が覚えてる公園と全然変わってなくて、安心した」
【真由】「実はね、昨日の朝ここにいたのもここを見に来たからなの」
【真由】「悠くんと、紗香お姉ちゃんと、茜ちゃんと遊んだ」
【真由】「思い出の公園が残ってるかなーって」
【真由】「そしたら落し物しちゃって、それで悠くんたちが話しかけてくれたんだ」
【悠】「すごい偶然だな」
【悠】「むしろここまで来ると運命とか」
【真由】「くす。だったら嬉しいな」
【真由】「そうじゃなくても嬉しいけど」
【真由】「新しい思い出が一つ増えて」
………………。
いやいやいや。
ちょっとそんな真面目に返されたら困るんですけど真由さん。
【真由】「♪」
【悠】「…………」
何て言うか。
すごく、照れくさい……!
【紗香】「確かにここ、みんなで遊んだ思い出いっぱい残ってるもんねー」
ナイス、ナイスださやねぇ。
そのままこの薄紅空間をセピア色の思い出に――。
【紗香】「ゆーちゃんを患者さんにして、私たちでお医者さんごっこしたり」
【紗香】「まーちゃんを患者さんにして、みんなで診察ごっこしたりとか」
【二人】「ぶー!」
このタイミングでいきなり下ネタぶち込む普通?
【まゆ】「は、はずかしいよぉ、ゆうくん、おねえちゃん……」
【まゆ】「そこがぴんくだとか、しらないよぉ……」
【悠】「…………」
っておいおい!
いかんいかん、思い出すな俺。
今の年齢の俺が昔のことを思い出すのは何かやばい気がするし。
というか真由だってこんな話いきなりされたら困るだろう……。
【真由】「…………ぁ」
【真由】「………………」
……な、何ですかその反応は真由様。
これは、もしかして……。
……そのことを覚えてるとか?
意識してる、とか……?
なんて、少し自意識過剰すぎだろ俺。
普通の女の子ならそんな話されて恥ずかしがるのが当然だしな、うん。
【茜】「はいはーい!」
【茜】「そんなおにぃの変態っぷりはどうでもいいからせっかくだし遊ぼうよ」
【茜】「きゃっほーっ♪」
と地球ジム(地球儀の形をしたぐるぐる回るアレ)に飛びつく妹。
【悠】「ったく、うちの妹は。ナマイキ盛りだと思ったけどまだまだ子どもだな」
【悠】「仕方ない、兄として付き合ってひゃっほー!」
【悠】「うぉおぉぉおぉぉ! 世界が回るぅうぅぅぅぅ!!」
【悠】「ごめんもう酔ったギブ」
【紗香】「はやい、はやいよゆーちゃんっ」
【悠】「いやもうホント無理、年取った」
【悠】「よく考えたら子どものころもあれ苦手だった気がする」
あんまりその場のテンションで行動するもんじゃないな。
【真由】「悠くんアウトしちゃったけど私も行こっかな
【真由】「うわー。それにしてもホントなつかしー」
【真由】「よくわかんないけど子どもの時ずっとこれで遊んでたなー」
言いながら真由も遊具へ駆け寄る。
輪が連なってトンネル状になってるやっぱり名称がわからない例のアレ。
その中に入っていき。
【真由】「ひゃー♪ なにこれなにこれー」
【真由】「意味わかんないけど楽しー」
叫びながらどんどん進んでいく真由。
そんな姿を見て思う。
自分がやるのは何とも思わないけど、人がやってるのを見るとアレだな。
滑稽だな!
いやそこがまた可愛いんだけどさ。
そんなことを思ってるうちに出口までたどり着いていた。
【真由】「よーし、ゴールだー」
【真由】「ん?」
【真由】「……あれ? あれ?」
ぐいぐいと輪っかから出ようとする真由
だけど出れない。
まぁそうだろうな。
だってアスレチックって基本子供用だし。
成長した俺たちの体だとハマる可能性もある。
というか実際今目の前で真由がハマってるし。
【真由】「んっー! んっー!」
頑張って出ようとしているその姿が。
【悠】「………………」
【紗香】「………………」
【悠】「…………ぷ」
【悠&紗香】「…………くす」
やばい。
おもしろかわいい!
【真由】「ふぬーっ! ふぎーっ!」
顔を真っ赤にしながら必死にお尻を抜こうとして。
だけど抜けない。
そんな様子が笑えるんだけど。
でも可愛い。
むしろだから可愛い。
【紗香】「だ、だめだよゆーちゃん」
【紗香】「笑ってないで助けてあげないと。ぷぷぷ」
【悠】「っとそうだな。助けないとダメだな」
いまだ奮闘してる真由に近づく。
そう、困ってるんだから助けないと。
【悠】「ほら真由、手貸して」
【真由】「ゆ、悠くん……」
【悠】「恥ずかしいのはわかるけどさ」
【悠】「そういう時はちゃんとぶふぅー!」
【紗香】「ゆーちゃん、笑ったらまーちゃんに失礼くすくす」
いやごめん、これは笑うでしょ。
むしろ逆に笑わなきゃ失礼!
【真由】「ちょ、ちょっともうっ」
【真由】「かっこよく助けるなら最後までちゃんとしてよ……」
【悠】「ごめんごめん、冗談だから」
【悠】「ほら、引っ張るから手握って」
【真由】「もういいよ、自分で出るから」
【真由】「ぬぉーっ! ふなぁーっ!」
さっきより力を込めて抜け出そうとする真由。
笑ったのは悪かったけどそんなに無茶すると……。
【悠】「真由、そんな無理やり出ようとするとケガする……」
【真由】「やったー、脱出成功!」
止めようとするが時すでに遅く。
【悠】「…………」
【紗香】「…………」
【茜】「ひゃっほー♪」
茜の場違いともいえる声が公園内に響き渡り。
【紗香】「え、えっと……」
ただ俺とさやねぇは何も言えず。
少なくとも俺は何も言えず。
真由のその一点を見つめていた。
というか目が離せなかった。
それもそのはず。
【真由】「?」
おそらく遊具のどこかにズボンがひっかかったのだろう。
なのに無理に出ようとしたからズボンが脱げてパンツ丸出しというご覧の状態に。
その姿は色気というより間が抜けて見えた。
【悠】「…………」
だがそれはそれだ!
ふむふむ。
色は純粋なる白と書いて純白。
可愛いより綺麗系の真由らしいチョイスと言えよう。
それにシンプルなだけじゃない。
フリルが軽くあしらわれてて奥ゆかしい少女っぽさもアピール。
つまり言いたいことはただ一つ。
ラッキースケベよありがとう!!
【真由】「どうしたの二人とも?」
何も言わない俺たちが不思議だったんだろう。
真由から疑問の目と声がかかる。
俺はというと何も言えず。
とりあえず隣のさやねぇを見ると。
【紗香】「~~…………」
珍しい、恥ずかしがってる。
さやねぇのこういう顔も見るのも何ともいい!
【真由】「???」
そんな俺たちへまた疑問の目。
さてと。
俺としてはやっぱり同性のさやねぇに言ってもらいたかったんだけど。
顔を赤くしてかわいくまごまごしてるし。
こうなると俺が言うしかないんだろうなぁ。
ただ個人的な意見を言わせてもらえばこのまま見ていたい!
……でもさすがにそれは失礼だ。
何よりこのまま他の人に見られるかもしれない。
それは絶対に許せない!
ということで、血の涙を飲みながら。
クールでウィットに富んだジョークを交えつつ真由が恥ずかしがらないように指摘をする。
【悠】「真由、その下着ちょー似合ってる」
【真由】「え? 下着?」
なんで急にそんな話?
と言った感じで目線を下へ。
よし、ここで一気に畳みかける!
【悠】「そう、下着だ」
【悠】「シンプルな色と形でありながらもクドくないフリルでさりげない可愛さをアピールしてる」
【悠】「真由にばっちり似合ってる、その下着だ」
完璧! パーフェクトだろこれ?
真由のセンスも褒めつつ下着が見えてることも指摘する。
これなら真由も恥ずかしくないはず!
【真由】「…………」
【真由】「…………」
【真由】「…………」
【真由】「…………」
目をくりくりしながら俺と自分の下半身を交互に見て、
【真由】「っっ~~っっ!」
一気にその顔を真っ赤に。
何故だ?これ以上の正解はないさやねぇがすごい冷たい目をしてくる!
違うんです、別にセクハラな意味とかそんな狙いはなくて!
……まぁ自分でも言っててちょっとどうかと思ったけど。
そんなことより今は真由のフォローが先か……。
【真由】「ごめんなさい二人とも、変なもの見せちゃって!」
【悠】「まぁ俺の趣味を言わせてもらったら真由には縞パンとか似合うと思う」
【真由】「わかった、今度はちゃんと縞々のはいてくるから今日のは忘れて!」
【悠】「おっけ。じゃあ楽しみに待ってる」
【紗香】「楽しみに待ってる、じゃなくて!」
【紗香】「というかいつまで見てるのゆーちゃん」
【紗香】「早く目つぶって360度回って後ろを向いて!」
【悠】「おいおいさやねぇ。360度回ったら結局前をm」
【茜】「妹エクストリームキィーック!」
【悠】「おっぶ!」
【茜】「乙女の叫び声あるところあたしあり!」
【茜】「何やったのか知らないけど……」
【茜】「さぁ、おにぃの罪を数えて!」
【真由】「違うの茜ちゃんっ」
【真由】「罪なんて言ったら私が可愛いのはいてこなかったのが悪いの!」
【紗香】「そんなこといいからズボンッ、はやくズボン!」
と昼下がりの公園でわーきゃーする俺たち。
茜に蹴られた背中は痛むけど。
なんかいいなぁ、こういうの。
昔みたいに、みんなで遊んでるような。
背中に地面の硬さを感じながら、そんなことを思った。
【真由】「じゃ、じゃあそろそろ帰る?」
あれから数分後。
無事危険を脱した真由は照れくさそうにそう言った。
いやいやもっと話そうよ、特にさっきのことについて!
なんてここで言ってしまう空気の読めない俺ではない。
【悠】「そうだな、いろいろはしゃいで疲れたし」
【紗香】「もぉゆーちゃん、そういうこと言わない」
【茜】「もしかしてまだ蹴られ足りない?」
【悠】「猛省しておりますのでそれはご勘弁を」
なんて結局言ってしまう俺だった。
【悠】「お詫びとして真由様の荷物は私めが責任を持って届けさせていただきます」
【真由】「別にいいよ、これくらい一人で持って帰れるし」
と軽く買い物袋を掲げて見せる。
真由がそう言うならそれに従おう。
さっき下着を見られた相手と一緒に帰るのは気まずいだろうしな。
俺も正直気まずいし!
【真由】「それじゃあまた月曜日ね、みんな」
【紗香】「またねー」
【茜】「ばいばーい」
【悠】「気をつけて帰れよー」
とそれぞれ手を振って別れようとするも……。
【真由】「っと、その前に悠くん悠くん」
ちょこちょこと近くに寄ってきた。
? なんだろう。
【真由】「あのさ、さっきのことなんだけど……」
【悠】「なるほど、例の件だな」
【悠】「大丈夫、ちゃんと明日には色も形も忘れてるから」
【真由】「ちーがーうー。そうじゃなくて」
【悠】「なんだ、違ったのか」
だから今日だけは使うのを許してくれ、なんて言わないでよかった……。
……いや冗談ですけど?
【悠】「なら何の話?」
俺もヒソヒソ話で続きを促す。
【真由】「えっと、ちょっと言うの恥ずかしいんだけど……」
【真由】「本当に私、嬉しいと思ってるんだ」
【真由】「この公園が残ってて」
言いながら目を細める。
心なしか潤んでるように見える。
【真由】「だってここは、みんなはもちろん」
【真由】「悠くんとの思い出がいっぱい残ってるから」
【真由】「いっぱいね♪」
【悠】「え?」
さっきとまるで違う。
こちらをからかうようなイタズラっぽい笑顔で。
【真由】「じゃあみんな、またねー」
そう言って公園から駆けて行った。
【悠】「…………」
えっと……どういう意味ださっきの。
俺との思い出がいっぱいって残ってるから、って……。
『いっぱいね♪』って! 『♪』って!
……もしかしてあれか……。
さやねぇが言ったお医者さんごっこのことか!
そのことちゃんと覚えてるよ、って言いたかったのか……。
あの時は俺も若かったというか……。
……でも今思うと結構ノリノリでやったような気も。
今日のことも含めて何とも恥ずかしいやら申し訳ないやらで……。
また機会があったら謝ろう、うん。
……でも藪蛇って言葉もあるしな……。
【悠】「う~ん……」
【茜】「なに話してんだろーね、おにぃと真由ねぇ」
【紗香】「ホントだねー、わたしたちにも言ってくれてもいいのにね」
【茜】「と思ったらなんか悩んでるし。何やってんのおにぃは」
【紗香】「…………」
【紗香】「あれ? なんでわたし……」
【紗香】「……なんか、もやもやって」
【紗香】「んー? んー?? んー???」
【茜】「んー。これは何やら……」
【茜】「あれな感じが……にしし」