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     【茜】「おにぃおっそい。先に食べてるよむぐむぐ」

     【茜】「もぐもぐんまー。やっぱりさやねぇのフレンチトーストさいこー♪ちょーもちもち」

     【悠】「茜、朝はまずおはようだろむぐむぐ」

     【悠】「ん、うまい。なにこの焼き加減? どうしたらこうなるの?」

    【紗香】「ありがとー。
そう言ってくれるのは嬉しいけどゆーちゃんもちゃんとイスに座ってから食べてね」

     【悠】「ごめんごめん。美味しそうな匂いだったからつい」

謝りながら茜の隣に座る。

テーブルの上にはさっき食べたフレンチトースト。いい感じに冷めたコーンスープ。

軽く焦げ目がついてるウインナーとチキンナゲット。

軽くドレッシングがかかったトマトとレタスのサラダ。洋食の朝って感じ。

     【悠】「相変わらず美味しそうだなぁ」

和食より洋食派の俺としては食欲がそそられる。

     【悠】「それじゃいただきます」

    【紗香】「じゃあわたしもいただきます」

     【茜】「いただいてまーす。あとおはようおにぃむぐむぐ」

     【悠】「ん? ばくばくなんかむしゃむしゃ言ったか?」

    【紗香】「二人ともご飯を食べながらしゃべらないのー」

    【二人】「はーい」

    【紗香】「くすくす」

そんな俺たちをさやねぇが見つめてくる。優しい笑顔で。

朝のスキンシップが俺とさやねぇの日常なら、茜も一緒のこの風景が我が家の日常だ。

俺と茜の両親は同じ広告代理店につとめておりそこそこ偉い地位にいるらしい。

そこそこ偉いということはそこそこ忙しいということで、
二人ともそんな仕事が大好きだった。

そしてそこそこ偉いということは経済的にもそこそこ余裕で。

だから俺たち兄妹の世話は家政婦さんとかがしてくれてたんだけど。

     【悠】「そういえば父さんたち、今度シャンプーの宣伝請けたらしくてさ」

     【悠】「もらったサンプル送るからおばさんたちにお礼言って渡しておいてって」

    【紗香】「それって確か『カモン、カモン、カモーン!』って言ってるやつだよね?
お母さんも喜ぶよ」

     【悠】「そうそう、それそれ」

    【紗香】「いつもごめんね。もらってばっかりで」

     【茜】「遠慮しないでよさやねぇ。いつもうちの親とぐけーが迷惑かけてるし」

     【茜】「こうやってご飯も作ってもらってるしあーむ」

お前もだろ、とは言わない。いや茜も迷惑かけてるけど。

俺たちが迷惑かけてるのは事実だし。

    【紗香】「お父さんも言ってたよ。久しぶりにゆーちゃんとキャッチボールしたいって」

     【悠】「さすがにプロ並みのフォークボールを投げてくる人とはちょっとなー」

     【悠】「んぐんぐまぁ行くけどね」

    【紗香】「お父さん、男の子も欲しかったみたいだからねー」

    【紗香】「ゆーちゃん以外の息子は認めないって言ってるし」

     【悠】「それは素直にありがとうって思っておきます」

さすがに冗談だろうけど。

そう。家政婦さんにお世話されていた俺たちだけど。

その後さやねぇのご両親に面倒を見てもらうことになったのだ。

何でも子育ては助け合い。

うちにも同じ年頃の子どもがいるし一緒に遊ばせればいい。
無駄にお金を使うことはない! とのこと。

今でこそ両親があまりいなくても困らない俺と茜だけど、小さいころはさすがに不安だった。

だからさやねぇたちにはどれだけ救われたことか。

そしてある程度年齢があがってもこうやって家同士の交流は続いていて、
時々こうしてご飯を作ってもらったりする。

さやねぇもさやねぇのご両親も俺たちの面倒を見るのが好きらしくて
そこは素直に甘えさせてもらって。

代わりにうちは両親のお礼とともに仕事でもらう商品を送ったりしている。

まぁそれ以上の恩がさやねぇたちにはあるんだけど。

あの家の人は恩とも思ってないのがある意味の困りどころだ。

     【茜】「ごくごくぷはー。ごちそうさまさやねぇ、おいしかったよ」

    【紗香】「おそまつでした」

     【茜】「んじゃあたし朝練あるから先に行くね。食器洗いよろしくねおにぃ」

     【茜】「あとあと晩ご飯は明太子パスタがいいなー」

     【茜】「そいじゃいってきまーーすっ」

    【紗香】「はい、いってらっしゃい」

     【悠】「あー、気をつけてな」

    【紗香】「元気だねぇ」

     【悠】「元気だなぁ、ごくごく」

     【悠】「というかあいつ、言い逃げしてったな」

仕方ない。今日はカレーにしようと思ったけど愛しの妹のために明太子パスタにしよう。

     【悠】「ぷはー。俺もごちそうさま。おいしかったよさやねぇ」

     【悠】「んじゃ茜にも言われたし、食器洗いはわたくしめに」

    【紗香】「わたしもごちそうさまー」

    【紗香】「二人で洗った方が早いし一緒にやろっか」

俺が腰を上げると同時にさやねぇも立ち上がる。

ここで断っても手伝おうとするのがさやねぇなわけで。

     【悠】「それじゃあご一緒に。さやねぇはスープとサラダのお皿よろしく」

    【紗香】「おーるおっけーだよー。ゆーちゃんもお皿落とさないようにね」

そうして二人並んで仲良く食器を洗う。

    【紗香】「♪」

鼻歌なんて歌いながら。これが俺たちの日常。

     【悠】「…………」

……まぁ日常なんだけど。通常運行なんだけど。

朝みたいなことして、家族ぐるみの付き合いをして。気を使うような相手でもなくて。

何も問題がないように見えて、その一つがかなりの重要な問題というか。

    【紗香】「ん? どうしたのゆーちゃん?むずかしい顔してこっちじっと見て」

     【悠】「いやー、今日もさやねぇは美人だなと思ってさ」

    【紗香】「えへへー。でしょでしょ。なんて言ったってお姉ちゃんだからね」

とニコニコ笑顔で微妙に意味がわからんことを。

まぁさやねぇが美人なのはホントだし別にいっか。

    【紗香】「よし、お皿洗い終わりー。それじゃ準備していこっか」

     【悠】「あいあい。んじゃまた10分後くらいに家の前で」

    【紗香】「はーい、それじゃまたねー」

笑顔を浮かべたままのさやねぇを、俺も同じ顔して見送って、

     【悠】「…………」

     【悠】「……ふー」

軽くため息をつきつつ、洗面台へ向かいながら心の中でつぶやく。

そうなんだよ。お年頃の俺にとって。

……というか俺たちにとってそれは本当に問題で。

まぁつまり。そんな関係の俺とさやねぇなんだけど……。

【クラスメイト】「おい悠、俺も何回聞いたかわかんねー、だけどもう一回だけ確認するぞ?」

【クラスメイト】「ほんっっっとーーーにお前と榛名先輩は付き合ってないんだな」

四時間目の授業も終わって昼休み。

焼きそばパンを片手に中山が絡んできた。

     【悠】「あぁ、付き合ってないって」

    【中山】「隣に住む、幼馴染の先輩からそんな弁当もらっておいて」

    【中山】「お前は付き合ってないって言うんだな?」

そんな弁当というのは、さやねぇが作ってくれた弁当。

ちなみに中身はピラフとウインナーとチキンナゲット。
それにハンバーグとブロッコリーと卵焼きだ。

     【悠】「もちろんだ。というか喋るのやめて、お弁当に飛んじゃう」

とまぁ朝に散々もったいぶった言い方をした原因というのがこれ。

俺とさやねぇは付き合っていない。

あんなことをされてたにも関わらずだ!

そして言ってないが俺もいろいろしたりしてるのにも関わらずだ!

もちろん体だけの関係とか不健全なものでもないし。

それ以前に体の関係もない。お互い触ったりするだけ。

……まぁそれも立派な体の関係なんですけど。

むしろこの場合、そういうのがあったらまた違ったのかもしれない。

よくある話と言ったらよくある話で。

小さいころから一緒に過ごしていたから距離が近すぎる、みたいな?

それが自然、みたいな?

言い方は悪いけどなぁなぁの関係を続けていた。

    【中山】「それならそれでいいんだ。ん、ん、もぐもぐ……」

    【中山】「ふー、やっぱ焼きそばパンとコーヒー牛乳のコンボはうめーな」

     【悠】「というかお前も何回も聞くなよ」

    【中山】「そんな顔するなって。先輩のこと狙ってるとかそういうのじゃないから」

     【悠】「そんな顔ってどんな顔だっつーの」

自分で眉間に力が入ってるのはわかってるけど、
でもどんな顔してるのかさっぱりだ。

いやほんとマジで。

    【中山】「俺がただ思春期で興味津々ってだけで。つーか普通気になるだろ」

    【中山】「家も隣同士で今も仲がいい幼馴染に、弁当を作ってもらったりして」

    【中山】「それなのに付き合ってないとか否定されたら気になるだろ!」

     【悠】「一回否定されたらそれ以上聞くなよ。お、ブロッコリーうまい」

続いて卵焼きを箸でくわえつつ。

     【悠】「逆に聞くけど、そういう人たちは全員付き合わないといけないのか?」

     【悠】「小さいころから一緒にいて、
お風呂に一緒に入ったりとかきゃっきゃうふふして、今でも仲が良くて」

     【悠】「お弁当を作ってくれたり時々作ったりしてるような男女は
付き合わないといけないのか中山くん!?」

なんかそういうノリでズビシと箸と卵焼きを向ける。

行儀が悪いから良い子はマネしないように!

    【中山】「全部が全部そうとはいわんが世間一般や漫画的に考えたら普通付き合ってるだろ」

    【中山】「というかそれ自慢だろ? 自慢してんだろ? おいこらっ」

     【悠】「さー?中山くんが自慢って思ったなら自慢じゃないかにゃー」

まぁこいつの言いたいこともわかる、けど。

俺たちの場合、ずっとこんな感じで過ごしてきたからなぁ。

それがいけなかったと言われればそうかもしれないけど……。

ちなみに中山には俺とさやねぇが触りっこしてたとは話してない。

……だってなんかイヤじゃん、そういうの。

    【中山】「まぁ悠がまだチェリーだってなら別にいい」

    【中山】「俺はそれだけでお前の味方で、そしてお前も俺の味方だ。
いつでも連帯保証人になってくれ」

     【悠】「ハンバーグもうまいなぁ(華麗にスルー)」

    【中山】「というわけでこれをやろう、今月の新刊だ。
まだ封も開けてないから安心してくれ(華麗にスルー)」

見事に相手の言い分をスルーし合う俺たちの間に一冊の本を差し出す。無駄にいい笑顔で。

そして本というのはずばり。

     【悠】「『コスプレH100連発!あんなコスこんなコスでコッスコス!』……」

     【悠】「エロ本じゃん! というかアオリだせぇ、昭和か!」

     【悠】「まったく、キャッチコピーを考えるならキャッチーなものにするべきだよなありがとう」

     【悠】「そもそもだ中山、
本当にもうちょっとありがとう渡すべき場所と時間を恩に着る選べよマジ感謝!」

    【中山】「気にするなブラザー! もらってくれると俺も嬉しいしな」

     【悠】「もらってくれると嬉しい? なんだそれ」

     【悠】「そういやさっきも開けてないとか言ってたよな。DVD目当てとか?」

    【中山】「いんや別に。ただ最近はエロ本を買うこと自体に興奮するようになってな」

    【中山】「特に女の子がレジをしてる時にとか最高だぞ」

    【中山】「赤面するのを眺めるのもよし、冷たい表情で見られるのもよし」

     【悠】「赤面するレジ店員がいるのってどこのコンビニだ?俺も行きたい」

この世界で一番かわいいのは恥ずかしがる女の子だからな。

まぁ行きたいってのは冗談だけど。

     【悠】「…………」

……しかしそうだよなぁ。普通は付き合ったりするんだよなぁ。

小さいころからずっと一緒に過ごして育って。

このお弁当のおかずだってどれもこれも俺の好みの味で。

そんなの知ってる女の子、普通はいなくて。

     【悠】「………………」

でもなぁ……やっぱりなぁ……。

そんな風に悩みながら、俺はエロ本を鞄の中へとしまった。

仕方ないじゃん、だって男の子だもん。

     【茜】「あ、さやねぇ発見」

     【悠】「ん? ほんとだ」

授業も終わって放課後。

茜と書いて愚昧と読む存在と一緒に帰ってたらさやぇを見つけた。

    【紗香】「それでねー。ってあ。やっほー、ゆーちゃんあーちゃん」

    【紗香】「ごめんね、じゃあまた明日ー」

 【女子生徒A】「はいはーい。それじゃまた明日ー」

そのまま友達と別れ、ぱたぱたとこっちに駆け寄ってくる。

    【紗香】「偶然だねー。二人も今帰り?」

さやねぇはそう言いながら俺の腕に自然に抱きつく。

おぉぉぅぅ……腕に感じる、圧倒的なボリュームががががgggg。

     【茜】「そそ。今日は朝練したからね」

     【茜】「陸上部の先生もだるかったら帰っていいって言われたから帰ってきた」

     【悠】「ほんとにうちの学園の部活ってゆるゆるだよな」

まぁ茜もダイエットのためーとかいって入ったし。そんなレベルでいい気もするけど。

     【悠】「さやねぇも今帰り?」

     【悠】「ってかよかったの? 友達と一緒に帰らなくて」

    【紗香】「いいのいいの。友達とは明日もクラスで会えるから」

    【紗香】「ゆーちゃんたちとは今しか帰れないし」

     【茜】「愛されてるねぇおにぃ。にししっ」

     【茜】「めちゃくちゃ嬉しそうにして、鼻の下ものーびのび」

     【悠】「おう、愛されてるな俺」

俺たちとも明日会えるじゃん、なんて無粋なツッコミはしない。

茜にからかわれようと実際嬉しいしな!

     【悠】「それより気づいてるのか茜」

     【悠】「俺は名指しで呼ばれ、お前は『たち』に含まれたことに。かわいそうな我が妹……」

    【紗香】「そんなつもりないよ、あーちゃんのこともちゃんと愛してるからっ」

そう言ってさやねぇは俺と茜の間に入り、二人の腕に抱きついてくる。

ふざけつつ、じゃれ合いながら。

本当に俺たちはこんな風に過ごしてきたわけで。

隣にいるのが自然、みたいな。

    【紗香】「えへへー♪」

     【悠】「…………」

しかしあれですね。

さやねぇが俺と茜の腕を組んで距離が近くなったからか。

うむ、さっきよりも強くされて感じる柔らかさもまたverrrrrrrry goooooooooood!

おっと落ち着け。冷静に冷静に。クールになるんだ俺。

     【悠】「さやねぇの胸、めちゃ気持ちいい」

無理でした。

     【茜】「おにぃサイテー」

    【紗香】「いやん、ありがと。ほらほら」

だって無理でしょ。普通無理でしょ。この存在感は意識しちゃうでしょ。

というかわざと押しつけて意識させてくるし。

さすがにちょっと恥ずかしくなったので話題変更を。

     【悠】「そういえばさっきの友達って見たことあるね、俺の知ってる人?」

    【紗香】「そだよー」

    【紗香】「この前わたし、お友達のバイトをお手伝いしたでしょ?その時の子なんだ」

     【茜】「コスプレ喫茶だ!さやねぇがフリフリメイド服着たやつだよね」

     【悠】「あぁ、あそこか、あの人か」

俺も茜と一緒に行ったところだ。

……さやねぇには言ってないけど、
ちょっとやらしいお店なんじゃないかってすごい心配だったので……。

多分その時に見たんだろうな。

ちなみに喫茶店は普通のコスプレ喫茶でした。変な客もいなかったので安心。

     【茜】「かわいかったねアレ、あたしも着てみたい」

    【紗香】「いいよねー。こう、ふわふわなフリルとか」

    【紗香】「レースも綺麗だったし。着たら身も引き締まる感じ」

    【紗香】「もしかしたら貸してくれるかもしれないから今度聞いてみるよ」

    【紗香】「ゆーちゃんもまた見てみたい? わたしのメイド服」

     【悠】「そりゃ当然。
さやねぇのメイド服見たさにお店に通ってポイントカードもいっぱいにした俺だし」

     【悠】「……でもちょっと待って」

     【悠】「確かあの喫茶店って他にもいろいろ衣装があったよな……」

     【悠】「……メイド服も見たいけど他のも見たい」

     【悠】「いったいどれにするか、これはすぐに答えは出そうにない……っ」

    【紗香】「えへへ、ありがと」

本気半分、冗談半分の言葉に目を細めて嬉しそうに笑うさやねぇ。

少し調子が崩れるけど……。

俺も笑顔になって。

これなんだよな、結局……。

さやねぇと一緒にいると自然っていうか、素の自分が出せるっていうか。

気負うこともなく。

かといって気負わないこともなく。

心地いい。

それがしっくりくる表現。

だからこそ、このまま一緒にって――、

     【悠】「ん?」

そんなことを考えたら道の先を女の子が通りかかって。

     【悠】「んー……?」

なんだろう……違和感、じゃなくて。

具体的に言えないけど……なんとなく、気になる感じ。

遠くて顔も見えなかったけど……なんか……。

    【紗香】「? どうしたのゆーちゃん」

     【茜】「どーせおにぃのことだから綺麗な女の人がいたー、とかでしょ」

     【悠】「あぁ。さっきそこを女の子が通って行ったんだけどなんかどこかで――」

    【紗香】「じー」

     【茜】「じー」

やばい、これは失言だった!

    【紗香】「そっかー。ゆーちゃんはわたしのことよりその綺麗な女の子の方が気になるんだねー」

     【悠】「気になるっていうか……いや気になるんだけどそういう意味じゃなくてね……?」

     【茜】「さやねぇ、こんなデリカシーがないおにぃほっといてあたしたちだけで帰ろ」

    【紗香】「そだねー、いこっか」

     【悠】「いやほんとごめんさやねぇ!マジでそういう意味じゃないから!」

結局二人の後ろを追いかけかーらーの土下座ラッシュで謝罪。

そうこうしてるうちに、感じていた違和感はどこかに忘れてしまった。

     【悠】「ふむふむ、我ながらばっちり。明太子とニンニクもよくクリームに混ざってるし」

朝のリクエスト通り晩ご飯は明太子パスタ。

さっきのこともあるのでいつも以上に手間をかけさせてもらった。

     【悠】「おーいマイラブリー茜ー。もうすぐパスタできるぞー。明太子大盛りだぞ大盛りー」

     【茜】「うっさいおにぃ、ちょっと待ってて」

     【茜】「それより今日体育あったって言ってたよね?ちゃんと洗濯機に入れた?」

     【悠】「あー悪い、入れるの忘れてた」

     【悠】「今から持ってくるからちょっと待っててくれ」

せっかく機嫌がなおりかけてるのにこれじゃまたネタにされてしまう!

火をとめてすぐに自分の部屋へと……。

     【茜】「まったくもう、不出来なおにぃを持つと苦労するなー」

     【茜】「いいよ別に。鞄の中に入ってるんでしょ」

     【茜】「洗濯当番だしあたしがとってくるから。おにぃはご飯の盛り付けしてて」

     【悠】「そうか。なら悪い、頼む」

     【茜】「その代わり、明日はあたしお好み焼きがいいなー。紅ショウガと納豆入れたやつ」

     【悠】「お好み焼きに納豆?」

     【悠】「そんな邪道なもの誠心誠意をこめて作らせて頂きます!」

     【茜】「わかればよろしい。んじゃお願いねー」

そうして俺の部屋へと行った。

ふー、なにも言われなくてよかった。

茜もお年頃のせいか最近妙に反抗というか、つっかかってくるし。

お兄ちゃんとしてはうざさ2割、嬉しさ10割(間違いではない)。

まぁ体操服出すの忘れてたのは完璧に俺が悪いんですけど。

ここは明日もリクエスト通りだな。お好み焼きに納豆はどうかと思うけど……。

     【悠】「……あれ? でも何か……」

忘れてるような気が……。

……それも大切なようで大切じゃないような。

でも大切なこと。

何だろう……部屋の中はちゃんと綺麗にしてる。

見られて困るようなエロ本とかはちゃんと隠して……。

     【悠】「…………あ」

     【茜】「なにこれおにぃ! セクハラ? 実の妹にセクハラなの?」

     【茜】「こういうことするためにわざと体操服出さなかったの!?」

その手には俺の首を討ち取った印。

すなわち中山からもらったコスプレもののエロ本が!

     【悠】「オーケー、よく落ち着くんだマイシスター。すぐにそれを床に置いて……」

     【茜】「うっさいばーかばーかえーろえーろへんたーい」

     【茜】「おにぃにセクハラされたってさやねぇに言いつけてやるーっ」

     【悠】「それだけはやめて!いろいろとマジでシャレにならないから!」

普段の調子ならいいけどマジのセクハラは本気で怒りそうだ。

いやマジのセクハラでもないんだけどね。

その前に、俺がそんなことするなんてさやねぇに思われたくない。

……待てよ、でもさやねぇなら
『こういうの好きなんだー』って自分から着てくれるかもしれない……。

それはそれは有りだな!

     【茜】「ぐすん……もしもしさやねぇ……? 今いい……?」

     【茜】「あのね……さっき部屋で着替えてたら、すん、
いきなりおにぃが入ってきて……それで、すんすん……」

     【悠】「待て、何が望みだ茜?まずは話し合おう、というか電話きって!」

     【茜】「きゃっ! やんっ、やめておにぃ……」

     【茜】「ま、またおにぃが無理やり……ぃやあぁああぁぁぁぁぁっっっ!」

俺の決死の行動も虚しく結局さやねぇに怒られまくり、再びの土下座ラッシュ。

明日から一週間、茜の晩ご飯リクエストに応えることでおさめてくれた。

あと明太子パスタは伸びました。

ちゃんとその後食べたけどね。