母さんへの連絡を済ませた僕は、ここへ足を運んでいた。
【恭平】「はい、どうぞ」
【晴斗】「失礼します」
【恭平】「ああ、晴斗か。どうした?」
【晴斗】「ちょっと聞きたい事があって。知ってたら教えて欲しいんだけど……」
【恭平】「瀬里沢のことなら、あれ以上は教えないぞ?」
【晴斗】「ち、違うよっ! それは自分で聞くから!」
【恭平】「ならいい。……んで? 違うなら、どうした」
【晴斗】「それが……えっと。校内に、変質者が出たって聞いた?」
【恭平】「あー、なんか志乃さん……っと。
理事長からの通達で来たな。なんで晴斗が知ってるんだ?」
……瀬里沢さんのことは伏せて置いた方がいいよね。
本人は言っても大丈夫って言ってたけど、デリケートな問題だと思うし。
それに―――
【晴斗】「実は、知ってる子の友達が襲われたみたいで。それで聞いたんだよ」
【恭平】「へぇ? じゃあ、その子の担任とかから理事長まで伝わったのかもな」
キョウ兄ちゃん相手なら、別に何を言っても良いと思うけど。
万一。
いや、1億分の1以下の可能性だけど、犯人がキョウ兄ちゃんって可能性もある。
だって、相手はあの瀬里沢さんだ。
見ていると、とろけてしまいそうなほどに可愛らしく、
ほっぺたばかりかメガネだってしゃぶりつくしたいほどに魅力的で。
いいや、むしろメガネだけで構わない。
丸ごと飲み込んでから吐き出し、それを震える指先で彼女に掛けさせたい。
その上でもう一度レンズをしゃぶりたい。
当然、メガネについた油脂はぬるめのお湯で溶かして就寝前に飲むよね。
鼻当ての辺りは、濃厚なだし汁が取れると思うけど、
培養してアブラマシマシで高脂血症まっしぐら。
そんな不摂生から倒れてしまった僕に、彼女は言うんだ。
『今度からは、わたしのためにヤサイマシにしてくれる?』……ってね。
そしてその後は……その後は……!
【晴斗】「薄め多めのバリカタになっちゃうよぉ!!」
【恭平】「うおおっ!? い、いきなりどうしたっ!?」
しまった、つい妄想が。
【晴斗】「……なんでもないよ?」
【恭平】「全然なんでもなくない気がしてならないんだが、
お前がそう言うならそう言うことにしておこう。妄想はほどほどにな」
【晴斗】「理解が早くて助かるよ」
さすがキョウ兄ちゃん、僕のことをわかってくれてる。
……と言う訳で。
だからこそ、いくら雫ちゃんに臓器ごと心を奪われているキョウ兄ちゃんだと言っても、間違いを起こさないとも限らないのだ。
解決するまでは、あんまり情報を出さない方が良いだろう。
【晴斗】「何か変質者への対策ってするの?」
【恭平】「放課後までには警備さんを増やすみたいだな。
まだ見つかったって言う情報も来てないし」
【晴斗】「そっか……わかった、ありがとう」
【恭平】「ま、お前の関係者ってことなら、見つかり次第連絡入れてやるよ」
【晴斗】「うん、よろしく。じゃあまたね」
【恭平】「おう。変質者に出会っても、ケツを掘られないように気をつけろよ?」
【晴斗】「キョウ兄ちゃんもね」
放課後まで……と言うことは、
それまでは事情を聞いた僕が、瀬里沢さんを守らないとね。
よぉーし、がんばるぞ!