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教室へ着くと、瀬里沢さんが既に着席していた。

    【陽砂】「あ……おはよう、天野くん」

    【晴斗】「おはよう、瀬里沢さんっ!」

ようやく会話する恥ずかしさにも慣れてきた僕は、会心の挨拶を繰り出す。

    【陽砂】「あれ? なんか元気だね。良いことでもあった?」

    【晴斗】「んふふふ~。ちょっとねー」

    【陽砂】「そっかぁ。楽しそうでうらやましいなぁ」

    【晴斗】「大丈夫、後で瀬里沢さんにも良いことをお裾分けするから!」

    【陽砂】「え、ほんと? ふふっ、楽しみにしておくね」

そう、『篠塚恵海』と言う新しいお友達をね! つってね!!

 【女子生徒D】「ちょっとちょっと陽砂、もう大丈夫なの?」

突如、クラスメイトが瀬里沢さんに声を掛ける。

    【陽砂】「あ、さっちゃん。ひと晩経ったし、多少は落ち着いたよー」

 【女子生徒D】「ほんと? それなら良かったけど……」

    【晴斗】「何かあったの?」

 【女子生徒D】「あ、おはよー天野くん」

    【晴斗】「おはよー、サミング・ジャック。略してさっちゃん」

 【女子生徒D】「誰よそれっ!?」

    【晴斗】「あれ? サルモネラ・菌子だっけ?」

 【女子生徒D】「幸子よ幸子! 下村幸子!」

    【晴斗】「そうそう、それ。ちょっと間違っちゃった」

  【下村さん】「“さ”しか合ってないし、そもそも日本人の名前じゃないじゃない!
つーかサルモネラ・菌子って何よ、食中毒ってこと!?」

    【晴斗】「熱いゲロが、下村さんを覆うかもね?」

  【下村さん】「余計イヤよ!」

わがままだなぁ、サミング・ジャックこと下村さんは。

    【晴斗】「世界中を襲う、恐ろしい下村さんは置いておくとして」

  【下村さん】「置いちゃダメじゃない!?」

    【晴斗】「どうしたの、瀬里沢さん?」

    【陽砂】「んっと……どうした、って言うか。なんて説明すればいいのかな、さっちゃん?」

  【下村さん】「あ~……そうねぇ。ちょっと、精神的にキツいことがあったのよ」

    【晴斗】「え……!? せ、精神的に!?」

注意深く瀬里沢さんを見てみると、確かに顔色があまり良くない。

そして綺麗な上に、抱きしめてハスハスしたいほど可愛い。

なんだろうこれ……恋!?

    【晴斗】「いや、もうしてるって!」

  【下村さん】「なにが!?」

    【晴斗】「あ、ううん。ちょっと通りがかりにサミングしただけ」

  【下村さん】「危なっ!?」

いけないいけない、つい自前でツッコミしちゃった。

    【晴斗】「けど、一体なにが……って、あんまり聞かない方がいい?」

不意に、この前の……僕が恋心を抱く切っ掛けになった、教室での出来事を思い出す。

    【陽砂】「ううん、大丈夫だよ。けど、どう言えばいいか……」

  【下村さん】「あ~……その。陽砂が、ちょっと絡まれたのよ」

    【晴斗】「? 何と? おろし醤油と?」

  【下村さん】「絡めたんじゃなくて、絡まれたの! 変質者よ、変質者っ!」

    【晴斗】「なっ……へ、変質者!?」

そんなことがあっただなんて、初耳だよ!

    【晴斗】「一体、どこの誰!? 心当たりはっ!?」

    【陽砂】「それが、全然……。天木学園の関係者だとは思うけど」

    【晴斗】「うちの関係者……?」

  【下村さん】「その……トイレの個室に居る所を、天井側からムリヤリ入ってきたこともあって。
昨日は帰り道に襲われかけたりもしたの」

    【晴斗】「なんだって!?」

それって、立派な犯罪行為じゃないか!
その上、どう考えても変態行為じゃないか!!

    【晴斗】「あ、相手の特徴は!? 目的は!?」

    【陽砂】「目出し帽とコートを羽織ってたから、顔はわからないの。
目的は……そう言えば、なんだろう?」

    【晴斗】「目出し帽とコートだって!? なんて怪しいヤツだ……もしくは寒がりだよね!」

  【下村さん】「好意的に解釈しすぎよ!?」

トイレにまで侵入するだなんて、排泄物を食べるタイプの男に違いないぞ!

    【陽砂】「あ、そう言えば昨日は、あの格好で『仲良くして』って言ってきた……ような?」

    【晴斗】「な、なんてヤツだ……排泄物を食べながら、仲良くして欲しいだって……!?」

  【下村さん】「そこまでは言ってなくない!?」

けど、そう言うことなら僕が手助けしないわけにはいかないよね!

    【晴斗】「わかったよ、瀬里沢さん。母さん……理事長にも伝えて、
周辺の警備とか校内の見回りを強化するようにお願いするね!」

  【下村さん】「え、そんなことできるの!?」

    【陽砂】「そ、そんな。わたしの事で、そこまでしてもらうのは……」

  【下村さん】「いいじゃないの、天野くんに甘えておきましょうよ。
もしかしたら、陽砂だけの問題じゃなくなるかもしれないんだし」

    【陽砂】「うっ……そ、それはそうだけど」

    【晴斗】「僕としては直接じゃなくて、
そんなことくらいでしか力になれないのが悔しいけど……」

    【陽砂】「ううん、とんでもないよ。ありがとう、天野くん。
それじゃ……お願いしちゃっても、良い?」

    【晴斗】「もちろんっ。任せてっ」

瀬里沢さんに頼まれたことが嬉しくて、自然と顔がニヤけてしまう。

いけないいけない。深刻な事情なんだから、注意しないと……って、ん?

……恵海?

こっちを見てどうし……って。

また逸らされた。

    【晴斗】「……?」

一体なにが……って、そっか!

瀬里沢さんが困っているのに気づいてて、
恵海もどうにかしたいと思っているのかもしれないな!

うんうん。そっちはそっちで僕ががんばるからね。

こういう不安な時に、恵海みたいな頼りになる女性が支えてあげれば、
瀬里沢さんだって心強いはずだ。

よ~し……これを機に、2人をお友達にさせちゃおう!