夕食も済み、日課の予習・復習をしている時のこと。
【恵海】「ふぅ……」
【晴斗】「あ、また」
ふとした瞬間に、恵海の溜息が耳に届く。
【恵海】「んんっ……申し訳ございません」
【晴斗】「やっぱり、何か悩んでるんじゃないの?」
今日はこれで……ええと? 4~5回目くらい?
さすがに、そろそろ見過ごせない。
【恵海】「いえ、なんでも―――」
【晴斗】「『なんでもございません』は、もう禁止ね」
【恵海】「……問題ございません」
わかってはいたけど。なんて強情なんだろう、恵海。
【晴斗】「はぁ……って、僕も溜息ついちゃったよ」
【恵海】「ファミリー向け4コマ漫画のオチみたいですね」
【晴斗】「恵海が、理由を教えてくれないせいだよ?」
【恵海】「何のことか存じませんが、語るべき理由などございませんよ」
【晴斗】「うぅ……あれだけあからさまにしてるって言うのに」
何度聞いてもこれだもんなぁ。
けど、あからさまだけに、
恵海が何に悩んでいるのかはなんとなく見当が付いている。
つまり……。
【晴斗】「人間関係について、悩んでるんじゃない?」
【恵海】「っ……なんのことでしょうか?」
一瞬走った動揺に、確信する。
やっぱりそうだ……僕の読みは、間違ってない。
【恵海】「私のことなど、どうでもいいですから。
晴斗様は、目の前の課題をこなしてくださいませ」
【晴斗】「はいはい、わかってるよー」
くふふ……生まれた頃からの付き合いの僕に、
隠し事なんかできないって思い知らせてあげないと。
覚悟しててよね、恵海!