【晴斗】「あれ、まだ来てないかぁ」
海岡さんに電話を掛けたのは、10分前。
いつもだったらちょうど到着するくらいだけど……夕方だし、道が混んでるのかな?
ま、すぐに来るだろうし、ここで待ってよっと。
【女の子】「えー、ほんとぉ?」
【男の子1】「マジだって、マジマジ! ジーマ・メリス!! 昨日の深夜通販で観たんだから!」
校門で迎えの車を待っていると、学校の前を元気な年下らしき子達が通りかかる。
【男の子2】「フッ……コイツのくだらないTVトークよりも、
ボクとラヴ・ミー・ドゥなシャトレーゼしましょう?」
【女の子】「あはっ、なになに? なにするのー?」
【男の子3】「ちょっと待てよウェイト・フォー!
トモちんの柑橘系の香りが散っちゃうだろ! スンススンスン!」
【トモちん】「やだー、カケルくんてば。今日は体育あったから、汗くさいよぉ?」
【カケル】「むしろご褒美だよプレゼントシックススアベニュー!」
【男の子2】「クスッ。トモちゃんのスメリーズであれば、
たとえドブリーズでも喜んでシャブリーズするさ」
【男の子1】「お、俺っちだって! なんならかぶるし! なんなら!」
【晴斗】「うわぁ……」
男の子3人が、必死に女の子を取り巻いている。
その姿は、さながら昔の映画で観た、番長と舎弟みたいだった。
それにしても、あの子達の制服……あ、陽都木学院か。
すごいなぁ。僕よりも年下なのに進んでるんだ。いや、むしろ先走ってるのかな?
【トモちん】「ん~……体育のこと思い出したら、肩凝ってきちゃったぁ」
【カケル】「なんだってワッツディス!?」
【男の子1】「な、な、なんなら揉むけど!? 血行をよくすることに専念するけど!?」
【男の子2】「ボクのアンゼルゼでコリホグスキーをスイーツスピリッツ?」
【トモちん】「えへへ……それならぁ。カバン、持ってくれるとうれしーかも?」
そう言って差し出したカバンを、
男の子達はまるで肉に集うピラニアのように奪い合う。
【男の子1】「うおおお、革! トモっちの革の匂いたまんねぇ!」
【男の子2】「セ・シ・ボン! セ・シ・ボン!」
【カケル】「プリングオフ! ハンマリングオン! ボスハンドタアァップ!!」
【トモちん】「わぁい、ありがとー」
【晴斗】「…………」
奇言をまき散らす3人を何でも無い様子でかわしていく女の子に、軽い戦慄を覚える。
恵海もうちの学校で随分とモテモテではあるけど、あれとは質が違う。
ひょっとして、あのトモちんて子、教祖様か何かなのかな?
その後、トモちん達が見えなくなった所でちょうど海岡さんが到着したのだけど。
なんだろう……すごいの見ちゃったな、僕。