今日は、朝から何かおかしい。
【陽砂】「うーん……」
【本庄】「どーしたの、せりりん? 肩から毛が生えて来ちゃった?」
【陽砂】「たぶん生えてないよ!? そうじゃなくて……」
【本庄】「期間限定で売ってた家系味の豆乳、飲み損ねちゃったの?」
【陽砂】「え、何それ!?」
【本庄】「味の濃さと油の多さを選べる健康系とんこつベース飲料だよ」
【陽砂】「全然、健康的な感じしないね……」
【本庄】「うん、甘じょっぱくてゲロまずかったー」
るーちゃんは基本的に子供舌なんだと思うけど、
変なチャレンジ精神があるから、よく不思議な物を食べている。
【陽砂】「……って、そうじゃないの。そうじゃなくて……
なんかね、今日はずっと視線を感じるんだ」
【本庄】「へぇ~……あ、るーちゃんそれ知ってるよ! 自意識カジョーだよね!」
【陽砂】「え……えぇっ!?」
【本庄】「あれ? 定形外郵便だったっけ?」
【陽砂】「それはまったく違うと思う!」
けど……そ、そっか。
たまたま感じた視線を意識しすぎちゃって、
自意識過剰になっちゃってるのかもしれない。
【女子生徒D】「え、なになに? 陽砂がモテルって話ー?」
【陽砂】「も、モテないよぉっ」
【女子生徒D】「うっそだぁ。アマガクに入ってから結構コクられたんじゃなかった?」
【陽砂】「そんなことは……」
【女子生徒D】「3回だっけ?」
【陽砂】「う……よ、4回」
【女子生徒D】「ほら、モテてんじゃん!」
正直に答えて後悔する。
うう、からかわれるってわかってるのに。なに言ってんだろ、わたし……。
【女子生徒D】「陽砂、普段から身だしなみに気を遣ってるし、
人当たりが良ければモテて当然だと思うわよ。ね、るーちゃん?」
【本庄】「うんっ。せりりんの肩毛、オシャレだよねー」
【女子生徒D】「肩毛あんのっ!?」
【陽砂】「生えてないってばぁ!」
ちゃんと話を聞いて、るーちゃん……。
【女子生徒D】「けど、4回どころか1回もコクられないままアマガクでの学校生活を終える人が
大半だって言うのに。全部断っちゃうとか、贅沢な話よねぇ」
【陽砂】「たまたまだよ。それに、本当にモテる人って言うのは……ほら、篠塚さんみたいな」
【女子生徒D】「あ~、ダメダメ。アレは別格。超人気アイドルが同級生にいるようなモンよ」
実際、篠塚さんの人気は学年の枠を飛び越えているばかりか、
噂では近隣の学校に通う人達からも注目されているらしい。
【女子生徒D】「ただ綺麗なだけじゃないのよね。
何て言うか、身のこなしとか立ち居振る舞いが、ただ者じゃないのよ」
【陽砂】「あ、うんうん。歩き方とかすっごい綺麗だよね。
椅子に座っている時の姿勢も、ぴしーってしてるし」
【本庄】「石化魔法かな?」
【陽砂】「そう言う意味じゃなくてね……?」
【女子生徒D】「男だけじゃなくて、女子からも人気あるのよね。
誰とも群れないから、かっこいい~みたいな」
【陽砂】「そうなんだ?」
けど、言われてみれば確かにそんな印象あるかも。
【女子生徒D】「唯一、天野くんとは昔からの知り合いらしくて、たまに会話してるけど。
頻繁ってわけじゃないしね」
そう言えば、時折2人が会話する所を、今までにも何度か見ていた覚えがあるかも。
そっか、2人って元々知り合いだったんだ。
【女子生徒D】「だからね、陽砂は篠塚さんに負けていることで悩んじゃダメよ。
あんたは、あたしから見ればじゅーぶんモテてるんだから」
【陽砂】「うん……って、あれ? 何の話?」
【女子生徒D】「陽砂がもっとモテるためには、どうすれば良いかって話じゃないの?」
【本庄】「うん、そうだよー」
【陽砂】「そんな話してないよね!?」
うぅ……とりあえず、るーちゃんの言った通り自意識過剰ってことにしておこうかな。
実際、誰からも気にされてなかったら、すっごい恥ずかしいもんね……。