【高志】
【真守】
【高志】
【高志】
【真守】
【高志】
【真守】
【愛菜】
【芽美】
【愛菜】
【真守】
【愛菜】
【芽美】
【真守】
【芽美】
【真守】
【高志】
【芽美】
【高志】
【芽美】
【高志】
【愛菜】
【真守】
【龍樹】
【真守】
【龍樹】
【龍樹】
【真守】
【龍樹】
【龍樹】
【真守】
【真守】
【龍樹】
【真守】
【龍樹】
【真守】
管理人の仕事は、玄関の掃除から始まる。
管理人室に置かれていた日誌に仕事内容は書かれていたので、
何をすればいいのか迷う心配はなかった。
朝の日差しを浴びながら、竹箒を持って掃く。
時間に追われる日々を過ごしていた僕が、
まさかこんな穏やかな朝を迎えられるだなんて、
つい先日までは思ってもいなかったことだ。
綺麗に掃いた後は、打ち水だ。
年期を感じさせる桶と柄杓があったので、水を汲んで柄杓でまく。
上を見上げると、そろそろ本気を出すかと言わんばかりに、
太陽が照りつけている。
今日も暑くなりそうだった。
「ああ、おはよう真守君。朝はやくから、ご苦労様」
と、玄関の扉を開けて中から加藤さんが出てきた。
「おはようございます。加藤さんもこれからお仕事ですか?」
「うん。今日は撮影があってね」
「ちょっと夜遅くなるかもだけど、構わず戸締りしちゃっていいからね。
鍵は持ってるし」
「撮影……ということは、するんですね……。セックス、するんですね……」
桶と柄杓を持ちながら、僕は羨ましそうに加藤さんを見た。
「そりゃ、僕はAV男優だもの」
加藤さんはさも当然という顔で頷いた。
「いいなぁ、いいなぁ。僕もセッ……」
セックスしたいと言いかけたところで、加藤さんが僕の口を塞いだ。
「あ、加藤さんにまも……じゃなくて今日から管理人さんですね。
おはようございます」
「うげー、朝から変態管理人と顔合わせるとか、勘弁してよ」
「こ、こら芽美……」
呼び方はそのまま真守さんでもよかったのになぁ、
とか思いつつ、僕は愛菜さんと芽美ちゃんに挨拶する。
「おはようございます。おふたりもお出かけですか?」
「はい。私はバイトで……」
「あたしは学校……めんどくさいなぁ」
「そんな事言わないでよ。制服を着た女子は日本の宝だよ?
めんどくさがらずに登校してくれないと、僕たちは心から潤いをなくしちゃうよ」
「……管理人さんっていつか警察のお世話になるよね、絶対」
芽美ちゃんがジトーッとしたあの目で、僕を睨んでくる。
「あれ? でも今日って22日で、祝日のはずだよね?
というかもう夏休みに入ってるんじゃないの?」
「夏休みかぁ、懐かしい響きだね」
「昨日が終業式で、本当はもう今日から夏休みなんだけど、
あたし図書委員だから当番の日は登校しないといけないの。
ま、図書室はエアコンあるから悪くはないんだけど……」
「はは、ぶつぶつ言ってても芽美ちゃんは真面目だからね。
っと、そろそろ時間だ……。俺は行くね。芽美ちゃんはバスだよね?
途中まで俺と一緒に行くかい?」
「そうしようかな。でもこの前みたいに職務質問受けちゃうかもよ?」
「あぁ、それは困るなぁ。その時はちゃんとお兄さんを守ってね?」
仲良く話をしながら、ふたりは歩いていく。
「それじゃ、私も行ってきますね」
「はい。お気をつけて、いってらっしゃいませ」
愛菜さんは別方向に歩いていく。
こうして誰かを家から送り出すなんていう経験のない僕は、
その新鮮さにちょっとドキドキしていた。
「ぐぉ……今日も日差しがまぶしいのぅ。溶けてしまいそうじゃわい」
一足遅れて、今度は歳田さんが出てきた。
「おはようございます。歳田さんも外出ですか?」
「うむ、おはよう。なに、わしはただの日課の散歩じゃよ。
そこにある公園をぐるっと回って帰るんじゃ」
「この時間は制服を着たおなごやスーツ姿のおなごがたくさんおるからのぅ。
目の保養には最適なんじゃ」
「そうなんですか。あ、でも今日から夏休みらしいですから、
制服姿の女の子は当分ほとんど見られなくなりそうですね」
「な、なんじゃと……ま、また今年もきよったんか……暗黒期が……。
そうか、もう1年になるんか……。
こうも暑いと外で遊ぼうというおなごもおらんからのぉ」
歳田さんが愕然とした表情になる。
この人も僕同様に思ったことをバンバン言っちゃうタイプらしいけど、
不思議と芽美ちゃんには好かれているようだ。
僕と歳田さんのどこが違うのだろう。
女子高ではおじいちゃん先生は可愛がられるものらしいが、
やはりおじいちゃんだと許せてしまうものなのだろうか。
「お主は今日はどうするんじゃ?
今のところ、掃除が終わったらすることは無かろう?」
「そうですね。今日は部屋の片づけをして、昼前にちょっと出かけてきます」
「仕事の打ち合わせが入っているので」
「ほうかほうか。ならその間はわしが留守番しておいてやるでな」
「ありがとうございます、助かります」
「ほいでは、行ってくるぞい」
「はい、お気をつけて」
僕は歳田さんを送り出し、打ち水の続きに戻った。