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【真守】






【真守】





【真守】




【真守】





【???】

【真守】


【真守】



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【真守】

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【真守】

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【高志】

【龍樹】

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【龍樹】

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【龍樹】

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【高志】


【龍樹】

【真守】


【真守】

【真守】

時間は、昨日へとさかのぼる。

夏らしくセミが鳴き、青い空がどこまでも続く、雲一つない快晴の日。

僕ことは、桃大前駅へと降りたった。

「へぇ……郊外って聞いてたけど、かなり都会だな……」

山がなく、木々の代わりにビルが生えている。

かといって緑が少ないわけでなく、
所々に植樹された街には、ひんやりとして心地よい風が吹いている。

とはいえ季節は夏なので、
日差しに当たっていれば相応に暑い事に変わりはないわけだが。

「さて、いつまでもここに突っ立ってても仕方ないし、移動するとしますか」

僕がこの街に足を運んだのは、これが初めてとなる。

この辺りは学園都市であり、様々な学校のキャンパスが密集しているらしい。

なるほど確かに、時間が午後3時過ぎという事もあり、
目の前を通る人の中には、制服を着た学生が目立つ。

(制服女子の多い街……。いい所だな。
 これからこんな素敵な街で暮らせるなんて、僕はなんてラッキーなんだろう)

移動するという目的をいきなり忘れ、僕は通り過ぎていく女の子の後姿をボーっと眺めていた。

(誰か一人でもいいから、僕の恋人になってくれないかな。
 こんなにいるんだから、この中に僕のことを好きになってくれる子が
 一人くらいいてもいいんじゃないかな)

僕はいまどき紙の地図を片手に、そんな大それたことを考えていた。

その時だった。

「あの、もしもし~?」

「……へ?」

突然近くで声がして振り返ると、手を伸ばせば届く距離に女の子が立っていた。

「うぉわっ!?」

僕はびっくりして後ろに飛びのいた。

足がもつれかかってすっ転びそうになったけど、なんとか踏ん張って耐えた。

「あ、驚かせちゃってごめんなさい。でも何度声かけても反応無かったから」

「あ、あぁ……ごめん。女の子を目で追ってたから気づかなかったよ」

「……は?」

目の前の女の子の目が、突然まん丸に見開かれる。

「あぁいや、別に変な意味で言ったわけじゃないんだ。誤解しないで」

「それで、僕に何か用かな?」

この女の子も制服を着ていることから、地元の学生さんなのだろうことがわかる。

しかもこの制服は、有名な桃大付属学園のものだ。

桃大とは国立桃華女子大学の略で、駅名にもなっているほど大きな大学だ。

他県から入学を希望する女の子もたくさんいる有名校だが、
それ故に合格率は低く、難関校のひとつに数えられている。

「あ、はぁ……。えーっと、地図……持ってらっしゃるみたいですけど……」

僕が手にした地図を指さしながら、女の子はそう言った。

「あぁ、うん。僕今日からこの街に住むことになってね。
 これからアパートに行くところなんだ」

「そう、なんですか。えっと、よかったら、道とか、教えることもできますけど」

何だろう、さっきから女の子がジリジリと僕から距離をとっている気がする。

視線も泳ぎがちだし、言葉も途切れがちだ。

緊張しているんだろうか。

「ほんと? ありがとう。実は着いたはいいけどこの辺り全く土地勘がなくてね。
 困っていたところだったんだ」

「調べようにも交番はないし、可愛い女の子はいっぱいで気が散るし……」

「……この人、なんかやばい……声かけるんじゃなかった……」

「え? 何か言ったかい?」

「あ、いえ。それでどこに行かれるんですか?」

「うん、ここなんだけどね?」

僕は地図を広げながら、目的の場所を指さした。

「ん~と……え、ここって……」

女の子の眉が、戸惑いがちに寄せられる。

地図と僕の顔を交互に見て、

「うそでしょ……? いや多分、近所ってだけよね……」

「ん? どうかした?」

「あ、い、いえ……。えっと、それでしたらこの道をまっすぐ行って……」

「ふんふん」

僕は女の子から道順を聞きながら、時折頷く。

それにしても、夏ってのはいい季節だ。

ジッとしていても、汗が出てくる。

汗が出れば、着ている服が肌に張り付く。

それに加えて上に何も羽織らないものだから、
薄いシャツが透けて下着が丸見えに……。

「それで、その道を左に曲がると目的地です……って、どこ見てるんです?」

「あぁ、ごめん。あんまりにもキミのブラが透けてるから。
 夏はやっぱりいいね、キミみたいな可愛い子の下着が丸見え……」

「んべらっ!?」

僕の言葉は、最後は奇声へと変わった。

女の子が、持っていたカバンで顔面をフルスイングしてきたからだ。

「せっかく人が親切に道を教えてあげてるのにっ! この変態っ、死ねっ!!」

女の子はすたすたと歩き去っていく。

「あ、ごっ……ごめんっ、別に悪気はなくて……。
 道教えてくれて、あ、ありがとうっ!」

僕は鼻を押さえながら、女の子に向かってお礼を言った。

「…………」

女の子は一度立ち止まって振りかえるけれど。

「フンッ……だ」

鼻を鳴らしてそのまま歩いていってしまった。

近くの本屋さんに入ったところを見ると、参考書か何かを買うのだろうか。

「はぁ……」

また、やってしまった。

どうも僕は思ったことをつい口にしてしまう癖があるらしい。

学生時代、友達に指摘されて何度も直そうとしたけど、結局直らなかった。

バカは死ななきゃなんとやら、というけれど、これもその類のものなのだろう。

とはいえあの子には不快な思いをさせてしまったようだから、
もしもまた会えたなら、そのときはきちんと謝ろう。

ドクドクと湧き出る鼻血をハンカチでぬぐいながら、
僕は教えられた道を歩き出した。

これから住むことになるこの新しい街を、
好奇心の赴くままに観察しながら歩いていく。

キョロキョロと忙しなく歩くものだから、
時折植木に足を突っ込みそうになったりもする。

「それにしても、住むところが見つかってよかったな……」

僕は今まで実家暮らしで、
大学を卒業してからは普通に社会人として会社に勤めていた。

会社に通いながら、漫画を描くという生活を半年くらい続けた。

でも会社に勤めると、
当然だけど学生時代のように時間を漫画に割くことができなくなる。

折角もらった連載の話も、
締め切りを守れそうになくて断るしかなくなったりする。

しかも睡眠不足で会社の業務にも悪影響が出始める始末。

なので、僕はすっぱりとやめてしまったのだ。

……会社の方を。

当然、親には『優先順位が違うだろ』と怒られ、勘当されてしまった。

家を追い出され、住むところを失った僕だが、
会社には半年しか勤めていないので貯金もわずかだった。

アパートを探そうにも、家賃どころか敷金を払えるかどうかも怪しいレベルだ。

でも、世の中には捨てる神がいれば拾う神もいる。

途方に暮れていた僕に、住む場所と働く場所とを与えてくれた人がいた。

その働く場所というのが、これから行くアパートだ。

僕は今日から、アパートの管理人として働く。

働く代わりに、家賃はタダにしてもらえるという話だ。

しかも管理人の仕事は僅からしく、本業である漫画には、余り影響しないらしい。

今の僕にとっては、願ってもない好条件だ。

1も2もなくその話に飛びつき、今に至るというわけだ。

「ここ……か」

僕は地図と目の前の建物とを見比べて、間違いないことを確認する。

アパートというよりは民宿といった感じの建物だ。

築50年は優に超えているだろう。

入り口に歩み寄り、安っぽくて不安になる扉の取っ手に手を掛けた。

扉の立てつけも、少し悪いようだ。

開けようとすると、ギギギッと木がこすれ合う音が響いた。

「お邪魔します~」

これから住むというのに『お邪魔します』は変かと思ったが、
『ただいま』というのもおかしい。

そんな事を思いながら、僕は玄関をくぐった。

建物内は、ひんやりとした空気が流れている。

身体中の汗が引いていく。

僕は靴を脱ぐと、管理人室の窓を覗いた。

「いるわけないか」

だってここの管理人は、僕なのだから。

ギシッと音を立てる廊下を歩き、
まずは荷物を置くために管理人室のドアを開けた。

「わ、すごいな……」

室内に入った途端、畳の香りが鼻を刺激した。

僕が以前住んでいたところは洋室だったから、
畳の部屋に住むのは初めてだったりする。

でも不思議と、懐かしい感覚になる。

それは僕が、日本人だからだろうか。

あらかじめ送っておいた荷物は、段ボールに詰められて積み上げられている。

この中身は、ほとんどが本だ。

「とりあえず、落ち着いたら荷物を片付けないとな」

出来るだけ早く、漫画を描ける環境を作らないといけない。

そのために色んな人に迷惑をかけてまで仕事を辞めさせてもらったのだから。

「前の管理人さんがやめてひと月は経ってるって話だけど、
 ちゃんと手入れが行き届いてるみたいだな……」

アパートの庭にやってきた僕は、そんな印象を抱いた。

定期的に業者さんでも入れているのだろうか。

芝はきちんと刈られ、植木も伸び放題といった様子はない。

だけど管理人となったわけだから、これからはこういう仕事は僕の役目だ。

「受けたご厚意を仇にして返さないように、しっかりと仕事しないとな」

僕が人知れずそう決意した時、ふと背後に人の気配を感じて振り返った。

「ん~? 泥棒……には見えないな」

「泥棒じゃったらこんなところでぼさっとしとらずに
 盗るもの盗ってさっさと逃げるわい」

「このアパートに盗るものなんてないんじゃないかな?」

「まぁ確かに金なんぞはないが、その代わりあれがあろう?
 わしがもう30歳若かったら、毎日盗んでクンカクンカしておるところじゃわい」

「はは、御老公らしいねぇ」

「あっ……えっと、こ、こんにちはっ!」

ふたりの男の人達が、僕を見ながらしゃべっている。

ひとりは僕より少し年上の、いかにも渋谷か原宿にいて遊んでいそうなイケメン。

そしてもうひとりは、腰の曲がったおじいさんだ。

「はい、こんにちは。俺はここの住人の加藤高志」

「わしは同じく住人の歳田龍樹じゃ」

「察するに、君は新しい住人……お仲間さんかな?」

「あ、いえ。僕は住人ではなくて、管理人です。
 今日からお世話させていただきますので、どうぞよろしくお願いしますっ!」

僕は用意していた台詞を言い、頭を下げた。

「わお、僕だって。なんだか育ちが良さそうな子だ」

「そうかそうか。坊主が管理人か。よろしく頼むぞい」

「はい。何か用事があれば、ぜひ仰ってくださいね」

「はは、じゃあそうさせてもらうよ。でも今のところ特に用はないんだよね」

「とりあえずゆっくり休んだらどうだい?
 あ、でもその前に簡単にこの日向荘のことを説明しておいた方がいいかな?」

なんだか、見た目とは違って丁寧な話し方をする人だな、と思った。

「はい、一応部屋は回ってきましたが、
 わからないことばかりですので、ぜひお願いします」

「うん。じゃあ説明するからついてきてくれるかい?」

僕は加藤さんと歳田さんに案内され、庭を後にした。

「そうか、管理人室にはもう行ったのか。じゃあ、そっちの案内は要らないな」

「ここが炊事場だよ。
 住人の部屋にはキッチンがないから、自炊する人はここを使うことになる」

「なるほど。逆に言えば食器をそろえるだけで、
 あとは全部ここにあるってことですね」

「まぁ、そうなるね。
 一応細かいルールはこれに書いてあるから、時間があったら読んどくと良いよ」

加藤さんは壁に張られた、注意事項が書かれている紙を指さした。

「はい、わかりました。使う前に必ず読みます」

「ふぉっふぉ。あとは、住人の説明だけじゃな」

冷蔵庫から梅干をひとつ取り出し、口の放り込んでから歳田さんがそう言った。

「おー、すっぱ。いまのところ住人はわしと高志、それと鈴木姉妹だけじゃな」

「姉妹……? ん? 姉妹って……。ここ女性が住んでるんですか?」

説明を受けたところ、この日向荘はトイレ共同風呂無しの、
家賃2万円の格安アパートだ。

言ってはなんだが、こんな時代の波に取り残されたような古いアパートに
住む女性がいるとは思っていなかった。

「うむ、おるぞい。
 それもピッチピチでとびきりかわゆい良い尻をしたおなご達がのう」

「今時珍しい、純真無垢な子たちだよ。
 だからちょっかいとかかけたらいけないよ?」

真っ先にちょっかいを出しそうな加藤さんにそう言われると、
なんだか納得がいかない。

「そ、そんなことしませんよ」

「わしがあと40歳若かったらセクハラしまくるんじゃがのう。
 寄る年波には勝てんわい。ほっほ」

どこまで本気なのかわからないけど、歳田さんはそう言ってひとり笑っている。

「まぁ、歳も離れてるし、俺らにとっちゃ妹や孫みたいなもんだね」

「俺らは自分のことは自分でやるからさ、
 できれば管理人の君には彼女たちを重点的に気にかけてあげてほしいな」

「まだまだ子供じゃからのぅ。大人の助けが必要じゃ」

「はい。分かりました」

「いい返事だ。それでこそ男だぜ。案内と言ってもこんなもので十分かな。
 それじゃ、俺はちょっとコンビニでも行ってくる」

「わしは囲碁ゲームの続きでもするかのぅ」

「あ、はい。ありがとうございました!」

加藤さんと歳田さんは僕のお礼にニコリと頷いて、炊事場から去っていった。

(良かった、ふたりともすごくいい人そうだ)

「さて、そろそろご飯の買い出しにでも行った方がよさそうだけど……」

その前に、姉妹で住んでいるらしい鈴木さんのところにも
挨拶しに行っておこうかな……?

僕は時計を見ながらそう考え、部屋へと向かうのだった。