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【芽美】


【愛菜】





【芽美】



【愛菜】




【芽美】


【愛菜】


【愛菜】

【芽美】






【愛菜】


【芽美】

【愛菜】


【芽美】

【芽美】

【愛菜】





【愛菜】




【芽美】

【愛菜】

【芽美】


【愛菜】


【芽美】

【愛菜】


【芽美】




【芽美】



【愛菜】

【芽美】

【愛菜】

【芽美】




【芽美】

【愛菜】



【芽美】

【愛菜】



【芽美】

















【芽美】



【芽美】

「今日も暑かったね、お姉ちゃん」

私は敷かれた布団の上に座ったまま、お姉ちゃんにそう話しかけた。

「う、うん、そうだね~」

狭い部屋に、ぴったりと寄り添って敷かれた布団。

寝返りを打てばお姉ちゃんか家具にぶつかって、
正直狭苦しいのだけど……私はそれを苦とは思わない。

だって私はお姉ちゃんのことが大好きだから。

「明日も今日みたいに暑いらしいよ」

夏場はちょっとだけ暑いけど、
冬場のお姉ちゃんはふかふかして温かくて、くっつくと幸せになる。

「は、早く秋になるといいのにね?」

でもそんなお姉ちゃんが、いま、なんだかおかしい。

パジャマを着たお姉ちゃんはお布団を敷いている最中、どこか上の空だった。

今だって、なんだか心ここに非ずと言った感じで、相槌に力がない。

「ねぇ、どうしたの? なんか、元気ないね」

私は気になって、思い切って聞いてみた。

「え……? そ、そう?」

お姉ちゃんは驚いた表情を浮かべた後、曖昧に笑った。

「そんな事はないと思うけど……」

「無理なダイエットして、体調崩してるんじゃないの?」

全くそんな必要はなさそうなのに、
先月あたりからお姉ちゃんは突然ダイエットなどと言い始め、
夕食を抜くことが多くなった。

別に太ってないのに。むしろ痩せられたら私が困る。

お姉ちゃんは少しくらいふかふかの方がいいに決まっているのだ。

「大丈夫だよ。心配してくれてありがとうね、芽美」

そう思うなら、毎食ちゃんと食べて欲しいものだ。

「妹に心配させる姉っていかがなものかとあたしは思うんだけど」

「ご、ごめんね。ダイエットも……もう必要なくなったし、
 今度からはちゃんと食べるから」

「ほんとにぃ? それならいいけど。でもリバウンドとか気をつけてね?」

「一気に太ってダイエット再開とか、あたし嫌だからね?」

「う、うん、気を付けるから……」

いつもなら、
私が憎まれ口を叩くとおとなしいお姉ちゃんでも少しは反論をするはずなのだ。

もっとも、ポカポカと軽く叩いてくる程度で、
そういうお姉ちゃんも私は大好きなんだけど。

「…………」

でも、お姉ちゃんはボーっとしている。

私に反論するでもなく、視線すら合わせず、
ただ布団の上に座って、私には見えない何かを見ている。

「……さっきは、どこに行ってたの?」

「えっ……ど、どこって……」

「夕飯食べた後、どこか行ったきり戻ってこなかったでしょ?
 なにしてたのかなぁって」

「あ、あぁ、うん……別に、たいしたことじゃなくて……。
 散歩……散歩に行ってたの」

「こんな時間に?」

「つ、月が綺麗だったから。ほら、そろそろ寝ましょ。
 私は明日もバイトだし、芽美だって学校行かなきゃいけないんでしょ?」

「うん、そうだね……」

お姉ちゃんが灯りを消して、布団に横になった。

私は頷くも、しばらくは横になる気分にはなれなかった。

お姉ちゃんが、嘘をついたからだ。

「確かに、きれいな月だね」

トイレに行った時、私は見たのだ。

管理人の部屋からお姉ちゃんが出てくるのを。

「でしょ?」

「でも、こんな時間にひとりで出歩くとか、危ないよ」

「……そうだね。もうしないから」

「うん」

私はポスッと、枕に頭を乗せた。

お姉ちゃんは背中を向けている。

私はそのお姉ちゃんの背中を、じっと見つめる。

「……ねぇ、お姉ちゃん……」

「なに?」

本当は、なにをしてたの?

そう聞きたかったけど、その問いは、結局……最後まで口にできなかった。

「おやすみなさい」

「うん、お休み、芽美」

網戸の向こうで、夜だというのにセミが鳴いている。

ツガイができず、焦っているのだろうか。

(お姉ちゃんにかぎって……そんな事あるはずないと思いたいけど……)

お姉ちゃんは隠しているつもりみたいだけど、
ファミレスがなくなって、お姉ちゃんが無職になっていた事は知っている。

お金がないお姉ちゃんが、夜に男の部屋に居た理由……。

それ以上は、考えたくない。

考えたくないけど、お姉ちゃんの身体からほのかに漂ってくる
嗅ぎなれない匂いが……思考を放棄する事を許してくれない。

私も、焦っている。

なんで自分は無力なのだろうかと。

お姉ちゃんの苦しみを知っていながら、
私は甘えながら過ごすことしかできない。

学生であることが、苦痛でたまらない。

早く、大人になりたい。

それが無理なことは分かってるから、
せめて何とかして、お姉ちゃんの役に立ちたい。

お姉ちゃんだけに苦労を背負わせたくない。

お姉ちゃんの苦労の種に、なりたくない。

「お姉ちゃん……もう、寝た?」

相当に、疲れていたのだろう。

隣から、規則正しい寝息が聞こえてくる。

「ごめんね、お姉ちゃん……」

入り込んでくる生ぬるい夜風に掻き消えるくらいの声で、
私はお姉ちゃんに謝った。